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過去雑誌に掲載された原稿など

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VGエッセイ〜立東社JazzGuitar2000より

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VG試奏レポ〜JazzLife 2000年4月号

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VG試奏レポ〜Rokin' on誌

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VGエッセイ〜立東社JazzGuitar2000より

●ローランドVG-8とワタシ 〜伝道師と呼ばれるギタリストが胸の内を激白(?)

もうこの雑誌を読んでいる方からすれば、VG-8の記事は何度も見たはずだし、そろそろ「VG-8 文:矢堀孝一」のキャプションも見飽きたことと思うが、当の本人はまだまだVGに飽きるどころか、いまだに新しい発見などもしていたりする。VG-8自体、まだまだ新製品と言ってもいいスペックは少しも衰えてないし、使用者も多くないのでこれから、というのでも十分「先見の明」ありの製品と言ってよかろう。先日、新星堂でやったデモでは「楽器店でこれを試奏するというのは本屋でシェークスピアを立ち読みするようなものだ」と我ながらおもろい発言をかましたがイマイチ受けなかったのは気になるが、いじくればいじくるほどにまだまだ新しい発見があるのだ。デモをやる度に曲を演奏したりするわけだが、新しい曲を入れたりする場合にまたエディットという状態に突入して新パッチ開発ということも少なくない。もう発売からかれこれ4年。「エレキギターの大革命!」と騒然としそうだった気配でアメリカでは爆発的にヒットしていながら日本の市場ではまだいまひとつ爆発しない現状は電動…いや、伝道師としては実に嘆かわしく、責任を感じ内閣総辞職も辞さずにはおれまい(どっちかわかんねえな)との心境である。ともかく、何故アメリカでは売れたのかという事について推察してみよう。まず大体、アメリカ、と一言で言っても北アメリカのことだが、国土は日本と比較にならないくらい広く、つまり人口も多く、市場がでかいわけだから台数が出るのは当然かもしれないが、実のところニーズ的問題があると訊く。アメリカには実にポップス系のツアーバンドというものが多数存在しており、しかしながら大多数は日本の高級ツアーバンドとは違い、トランポと呼ばれる機材からセットから一切移動を引き受けるトラックだとかスタッフがいるわけでもなく、ただただ地道に自ら機材をカートで運び、それで毎日のように移動しては演奏するというスタイルのミュージシャンが多い。らしい。日本とは比較にならないスケールであるからして、都市間の移動となれば飛行機というのがちょうど日本で言うバスのような感覚で利用されていることも知られている。従って国内線の場合、ステュワーデス(アテンダント?)と言えども、近所のオバサン的な立派な体格の方もしばし見受けられ、飛行中も和やかに大声で世間話に興じてらっしゃる。それはいいとして、かたやギタリストはと言えば、カントリーからハードロックまで演奏し、オープン・チューニングも当たり前の世界だが、こうした移動の事を考えたらギターを何本も持って動くわけにもいかない。大体飛行機ともなれば手荷物には制限があるしな。第一、アンプ手持ちともなればほぼデパートから帰るマスオさん状態で荷物にまみれる。当然だがマーシャル3段積み等の大型モノは不可能で、精々ポリトーンみたいな小型ものが限度だろう。こうしたミュージシャンにとってVG-8はまさしく待望の最終兵器だったわけである。なぜなら、アコースティック・オープンG指定のバッキングからいきなりヴァン・ヘイレン・ソロ指定に対応できる。しかもギターは愛用の一本だけで、アンプも要らない。歌モノが基本だけに店にはPAシステムというものはまずきちんと装備されているから、ライン・アウトでそこへ繋いでしまえばよいのだ。米国ではワタシが媒体でアピールしていた「自由度の高い創作性を持つホンモノ」の楽器、という観点よりも、実状的に「いかに可搬性に優れ便利か」という点で人気になっていた可能性が濃厚である。勿論、でかいツアーバンドで楽器群も充実している上でVGを使っているミュージシャンもそれはそれで結構いるのだが、ともかく、そのあたりが米国でのヒットの理由と考えることができる。筆者もRoland担当者もこうした事実は踏まえていたのだが、歪みや空間に執拗にこだわり国土も比較的狭い(移動が米国にくらべればきつくない)日本の市場において同じ戦略が成り立たないことは予測していた。歪みにうるさい人はまず、マーシャルならマーシャル、あの個体である必要がある。いくら原理が同様であってもあの風貌も音の一部だし、スピーカーからの風圧も感じたい。勿論大型のあのキャビの前で弾く自分という画像も重要だ。アコースティック・ギターもまたしかり。ホンモノであれば色々と設定する必要もないし、どういう環境だろうとホンモノに違いないし、弾き心地というのもある。そして、日本では先述の米国のギタリストのような存在はとても少ないようだ。ツアーをするポップス系のグループ、たいていはトランポがあって、マーシャルなり生ギターなり、こういうものの移動は引き受けてくれる。よって、そういう用途でのVG-8の需要はホントにあまり訊かない。筆者が例えば「ポリ・ディストーション」や、「弦セパレート」、「ピックアップの任意移動」といったアイテムを中心にこの楽器を語っていたのにはこうした背景があるといっても過言ではあるまい。しかし、非常に自由度が高いが故に音的に凝ろうとしても設定が複雑になり音色変化も劇的、価格も絶対的に見れば決して安くはないし、しかもGK-2Aが必要ということもあってなかなかユーザーも踏み切れない。筆者、このような現状を踏まえつつも各地で伝導活動を続けてきたが、ピックアップを移動してみせて「ほら、こんな無茶苦茶な設定は、実際無理でしょうが。」とか、ポリディストーションで「テンション・コードもディストーションで弾ける!」などと言ったところでまだギターを手にしてまもない高校生などにはなんのことかわからない。もとより、基本的なというか本来のギターというものの機能、音の出し方などに関する知識があってこそ、それを飛躍するかまたは便利モノとして踏襲する為のマシンなわけだから仕方ないことは重々わかっているから、彼らにこういう物体を闇雲にススメるのは酷というものである。かたや中高年の方々はやはり楽器個体としての所有価値というものが必須であり、それら個体がそこにあるからこそ、というニーズは実際よくわかる。そういったニーズを前にしてはなんとなくVGが、「絵に描いた餅」のように見えても仕方ない。翻って「絵に描いた餅」だからこそ出来る、ユーザーの用法次第でどこまでも突き抜ける可能性を持ったVG-8。反面、スイッチひとつであらゆるギター音楽に対応する便利な機材であるという側面。…いかん、なんだか泣き言のようになってきた。いいモンだからこんなに苦労する予定ではそもそもなく、ワシがなんもしなくても飛ぶように勝手に売れる予定だったのだ。やはり、プレイヤーのココロをくすぐる巧いデモが打てなかったのだろうか…。そこで、今年に入ってからのデモ(結構数的には少なくなってるが…)では今まで語ってきたような側面をもう少し卑近で且つ、グローバルにとらえたセッティング・デモを始めた。デモを見た方もいると思われるが、それについて詳しく供述しよう。楽器フェアでもある楽曲で使用したセッティング例だが、流れとしては

・生ギター系→カッティング→歪みソロ→カッティング…

というもの。生ギターはいいとして、カッティングだが、これはストラトのピックアップ=フロント・センターのハーフトーンをJCかTwinなどに突っ込んだ感じのクリーンなもの。ソロ用の歪みはヴァン・ヘイレンを意識したヘビーなもので、リア・ハムを5150などの大型真空管でドライブさせまくった感じの音。これらの音色をスイッチング一発で瞬時に切り替えるというものだ。VG-8は、ピックアップセレクトも内部で行うので、当然だがギターのセレクターを切り替える必要もなく、ほんとにフット・スイッチのみでいい。その他、アンプ、スピーカー・セッティング、空間系も一括して変更される。もし、実際にこれをやろうとした場合は、生ギターはスタンドにセットして「立たせ」、S-S-Hなどのストラト・タイプのギターをストラップで体に半固定(普通に持つということだな)させ、アンプはクリーンと歪み(大型真空管)をセットし、セレクターで切り替えられるようにする。…大がかりなセッティングになるが、実際、ツアーバンドのギタリストならこれくらいはやってるだろう。そこまではいかずともアンプは一台としてエフェクターで歪みを作るか、もしくはプリアンプの切り替えのみという感じにするのが普通かもしれないが、回線の方はアコギ用ラインと、マイクがそれぞれのアンプにと、結構複雑になることも見逃せない。VGの場合はここがライン2回線でよく、しかも全てステレオ出力になるという利点もある。具体的な設定だが、以下、すべて深夜にヘッド・フォンで行ったエディットの実例を紹介する。ああ、それもなかなか普通では出来ない長所だな。

・アコギ

RndBackというファクトリーセッティングを使った。これはバックがまるっこいあのギターのモデリングだが、これをもとに好みのエディットをすると結構イケル感じになりやすいと思う。やはりそれでも使用ギターそのものがエレキで細めの弦だったりするので感触というものに違和感があるのは否めない。リバーブを結構掛け目にするといいだろう。

・ライン的カッティング音色の作り方

実は筆者、カッティング関係の音色として、ファクトリー・セッティング内では"SRV"以外ではあまり気に入ってるのはなく、"SRV"だとナチュラルにドライブがかかっているので場合によっては使えない。SRVもそうだが、Pedal&Ampという設定のパッチを選んでイチから作った。そもそもクリーンなカッティングは一時期「ライン録り」も流行ったので、ライン的にプリアンプなしにするという点に注目してみた。ピックアップはCLA-ST MODELや、ModernST、またはVARI MODELもいい(筆者はCLA-ST使用)。ともかくフロント・センターやリア・センターのハーフ・トーンにしてみる。PedalでCompTypeを選択、それ以降のPreAmpとSP/MICはOFF。PUのTONEや、COMP、EQ/Volだけで十分な音づくりができる。流石にモデリングされてるだけあって、しっかりそういう音になりますな。

・歪み

ファクトリー・セッティングにも歪みのパッチは多く、それでサイコーなやつが見つかるなら何も問題ないが、イマイチ、ピンと来ない人には次の方法を試してみて欲しい。SLDN2×12とかいうパッチがあると思うが、これがDualAmpの設定なので、これを元に設定する。要はDUAL AMPという設定のパッチを利用して2台のアンプの距離感を使い、空間的な音づくりを目指すというわけだ。で、ここで究極の荒技だが、大胆にもPreAmpをOFFにしてしまう。当然歪まなくなるので、ここでPedalの登場だ。PedalにはDRIVEとDIST、METALの3種類の歪み系エフェクターがあるので、好みのものを使う。筆者はDISTを使用。歪みを作るには、真空管アンプのゲインアップという方法と、ディストーション系エフェクターによる回路系の方法があるが、原理的にはどちらも波形のクリッピングであることに代わりはないのである。要は好みでいずれかの方法をとるか、もしくは両方とも使用するという手もある。とりあえずペダル・ディストーションを使用し、歪みのレベル、DIST=100で作ってみてあとで歪みの量を加減するという方法をとった。最初はA/B両方とも同じようなセッティングにしておく。DUAL AMPのパッチは文字通りAとB、2系統の音を作ってミックスさせたり振ったりできるパッチである。AMPはAもBもOFF。そして、SP&Mの項目。これが大事。これをOFFにするとものすげえ音になってしまう。基本はAはONマイクではっきりと輪郭を出す設定に、BはOFFマイクにしてアンビエントな感じを出すというのがよい。例として、AではClassic Stack(前進性の強い指向性、適度なバランス)、Small Dinamic MicでON使用にすると輪郭のはっきりした歪みが得られる、はず。かたやBではModern Stack(ややファットな感じだが、Aと同じでもいい)を使用し、Large Dinamic Mic をOFF使用する。要はレコーディングでやるON/OFFマイク両方セッティングで立体的な取り方を再現するわけだ。Pageを切り替えてPUの設定に入る。レスポールのタイプが良さそうだ。PAFや、LPタイプなど、なかなかに抜けの良さがでる。LEVELはとりあえず最大に。TONEは真ん中から決めていく。問題は、最後のMIXセクションだ。ここにDiffuserというものがあるが、これは、簡単に言うと二つのアンプの距離感を設定し、はっきりさせたり、ややぼやけた感じにしたり、そのうえ、L-Rどういうバランスにするか、そういう設定が出来る箇所。PAGEをめくってDIFFUSERのONを確認し、とにかくいじり倒す。かなりステレオ感や立体感が演出できるはずだ。最後にEQ/VOLでイコライジングの微調整を。大抵はハイがきつめになるので、筆者もハイは絞っている。このセクションでもかなり音質は調整できる。こういう設定にすることで、PAを通した場合にも勿論ラインであっても、立体的で奥行きがある、マルチ・エフェクターでは不可能な音づくりができる。実際のライブなどでも結局のところ音がでるのはPAシステムなので、そこからの出音(ヘッド・フォンでのモニター状況にかなり近い)ということも加味して考慮してほしいな〜なんて思う。

…VGのパラメータをめくったことがない人には一体なんのことかさっぱりかもしれないが、もしも入手してみたら参考にしてみて欲しい…と願うばかりだが、パラメータの名称等はどうであれ、VGの設定構成がいかに充実しているか、ま、言い方を換えればいかに複雑であるかがおわかり頂けるだろう。しかし、これはデジタルゆえの複雑さ、というわけではない。実際にギターをアンプに繋ぎ、録音するという課程を経過した場合に意識的かどうかは別だが実際に行われている操作、セットを踏襲した場合にはこれらの設定が起こっている。デジタルである所以と言えば、こうした設定が保存でき、いつでも瞬時に呼び出せるということだと言える。また、上記のセットを実際の物体でイチから再現するとなるとかなり膨大な費用と時間がかかるであろう。しかも、もしも電車で移動、ということなら当然不可能な情勢となる。というようなわけで、また少し、VG-8にココロを動かされた諸氏、「シェークスピアの立ち読み」かもしれないが楽器店で店員様の許可を得てじっくりいじっくてみてはいかがかな。尚、VG-8や、GX,GT,GRシリーズの質問にホームページやEメールでもお答えしています。多忙な場合、かなりお待たせしたりしますが質問は必ず実名にてお寄せください。また、その後の進展などもお聞かせ願いたいと思います。

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VG試奏レポ〜JazzLife 2000年4月号

●COSMギター・モデリングとノーマル・インプット

VGといえばGK-2Aということで、このデバイディド・ピックアップ(各弦をばらばらに拾うピックアップ)を使用することで、弦ごとのピッチ・シフトやポリ・ディストーションを可能にし、VGの内部でフロント、リアetc

のピックアップセレクト、さらにボディのモデリングも可能というのが言ってみればVGの「売り」である。それについては各項目ごとに詳しく触れるとするが、VG-8においては実際のところ使用できるのがこのGK-2Aのみであることがネックだった人もいたのでは、と思う。実際ワタシもVG行脚しながら、「これって普通のインプットがあってもいいじゃないの?COSMアンプとかいけてるし。」とか素朴に意見したことがあり、この意見が通ったかどうかは知らないが、VG-88ではこれが実現されてしまった。要は、COSMギター・モデリング以降のアンプやエフェクトの部分がノーマル・ピックアップで使用できる、と、そういうわけだ。これはいい話じゃん。例えばさっきの「ご意見」のようなニーズや、どうしても愛機レス・ポール・モデルのリアだけは使いたく、けどストラトのハーフ・トーンも出して使い分けたい、みたいな割とできそうでできなかったことができ、スイッチ一つで切り替えられる。そしてなんと言ってもこのVG-88、そのCOSMギターがもの凄く強化されているのだ。特に従来的なギター・セッティングの「直感的」な感じが素晴らしく、「こうしてああするとこんなやろ」みたいなものが素直に再現される。試しにビンテージ系のストラトタイプのギターにGK-2Aを装着し、それと同じセッティングをVGでつくり、ノーマル・ピック・アップの出力と比較しながら切り替えていたところ、途中でどっちだか分からなくなったほどだ。マジで。さらに、VGならではのモデリングのひとつAcousticタイプを選んでPIEZO中心にアコースティック・アンプ(これもアンプ・モデリングに内蔵)やエフェクトを使用した音色も適度なざらつき感とパリッとした独特の抜けがあって抜群。ピッチ・シフトを利用して変則チューニングや12弦仕様にしたりするとさらに強力な世界観が獲得できる。そして、その他、ナイロン弦のモデリング、管楽器シミュレーション、フィルター・ベース、などもこのCOSMギターに含まれていてギターの音色表現はこの新しいデバイスによって飛躍的にワイドになった。また、ポリ・ディストーションの他、ポリ・オクターバー、ポリ・スローギアもこのCOSMギターのカテゴリーに加わっている。ポリ・オクターバー、ポリ・スローギアはそれぞれ従来からその独特な音色が人気のエフェクトをポリフォニックで使用でき、どちらも従来は和音を出すとうまく動作しなかったのが常識だったがこれが覆されたことになる。はっきり言ってこれはすごいです。エライです。因みにVG-88のパッチにはワタシが制作したものがいくつかありますので…それも含めてお試しください!

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VG試奏レポ〜Rokin' on誌

●VG-88

VGと言えば、ピック・アップから耳に聞こえるところまでのギター・サウンドをオールラウンドにしかもハイクオリティにセットアップ可能なシステムだが、この機能がよりパワーアップ、しかもGK-2Aのみならず、普通のギター・インプットが装備されてより幅広い音作りが可能になった。特にギター・モデリング部分の性能は驚異的で、手持ちのギター一本で、レスポール・タイプや、ストラト・タイプのハーフ・トーンなど、代表的なものは勿論、ホロウ系、アコースティック系のモデリングなど、耳を疑うほどのサウンドがクリエイトできる。これらは、EQやフィルターで処理して「似せている」のでは決してなく、コイルの特性や、弦長による倍音成分や周波数の特性などの演算によって得られるため、単なる代用という感覚を通り越した「ホンモノ」の音というところがミソだ。88では特にアコースティックのピエゾ音色が素晴らしく、曲中でのアコギ→エレキの持ち替えをこの一台で解決できる人も多いはず。勿論、内蔵のCOSMアンプ群は流石のお家芸でクリーンからかなり強烈な歪み、そしてアコースティック・アンプに至るまで実に幅広く、自由度が高い。凄いもんができた。

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